蛙の井戸見聞記 Pretty frog in a well who knows nothing of the great web ocean!

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産科医の問題とか。

最近のニュース、東京の産科急患たらい回しの件。

結果はものすごく痛ましいと思うんだけど、でも、コメントしている人たちの考えていることは、よくわかんないんだよね。

墨東病院が悪い、東京都が悪いって言っているけどさ、何かっていうと、競争原理を導入するのがベストだって言ってたはずじゃん。産科医の不足も競争原理の結果だってこと。世の中で言うところの競争原理って、カネが稼げるものが一番素晴らしいってことでしょ? 金銭効率悪かったらみんな産科医なんてそりゃやめるさ。

その中で奮闘している人たちが疲れ切っているのは、五の橋医院の医師の顔を見れば分かる。女性の方の医師なんて、若そうに見えるのに白髪混じりで、発言には抑制した静かな怒りを感じるもんね。墨東病院や他の病院に対する怒りもそりゃあるんだと思うけど、どちらかというと、結果としてそういう対応をせざるを得なかった先方の事情も知らないわけではなくて、その全体的な状況に対して、怒っているという印象を受けた。

日本全体のお金が人数に対して足りなくなってきている、あるいは、偏在しすぎてきているってことなのに、そこに次々と「競争原理」すなわち独立採算という制約を入れてきたわけでしょ。そりゃ、カネを効率よく集められるところに人間は集中するさ。

利益が偏在するのが眼に見えると、多くの人はその偏在側に行こうとするし、利益を得るのは当然の権利だと思って行動するんだけど、偏在すればするほど、偏在領域に滞在できる人間の数は減少するんだよね。それ以外の効率の悪いところは「誰かがやってくれる」「制度を整えればいい」と目に見えない誰かの仕事だと思っているけど、本当は、その「ヒト」が重要で、「いったい『誰が』やるのか?」という問いに答えなきゃいけないんだよね。

それに答えられない限り、いくら医学部の定員増やしたところで、この問題は解決しないと思う。つまり、産科医に限って言うならば、医学部に入ってきた誰が産科医になるのか? 医者免許を持った誰がどういう産科医の役割を果たすのか? 制度はその後についてくるものでしょ?

墨東病院にしたって、スタッフを増やしますという解決策をしたとして、どこかから即戦力のある優秀な医師を持ってきたら、それはどこかで活躍している希少な即戦力を奪っていることになるわけで、かといって、経験の薄い新人を雇うということはそのヒトの教育までやらねばならないというさらなる負担増になるわけだ。 誰がその教育をやるのか? どの即戦力を奪ってくるのか? という話。おまけに、休日とか土曜とか、夜中とか、「医者も人間だから」休みたいという安息の時間帯の激務を引き受けてくれるその「誰か」を探さなきゃならない。

産科医は、命にかかわるクリティカルな問題だから、その問題点が明瞭であるけど、他の事柄だって同じ。
「教育」も、「食品」も、「エネルギー供給」も、「技術開発」も、「基礎研究」も、「農業」も、「環境問題」も、何もかも、結局、華やかな部分だけしか見ないで、あるいは近視眼的な問題点をやり玉にあげるだけとか、そういう花形の部分だけをみんながやりたがるけど、一番根本にある「必要だけど金や労力が掛かって効率が悪い部分」は「見えない誰かがやってくれるはず」と思って疑ってない感じがするんだよね。そういう根本に感謝するでもなく、「当然だ」という上から目線。

・・・・こんなことやっていると、いつか破綻すると思うけど。。。いやもう破綻しかかってるのか?